研究プログラム「各研究」 >仲野 徹 このページのプリント及び保存(128k)→
COEでの主な研究内容 幹細胞・ES細胞の分化機構の解明と制御法の確立
研究代表者 仲野 徹(教授)
所属 医学系研究科 分子病態医学専攻 病理病態学講座(病理学)
生命機能研究科 生命機能専攻 時空生物学講座 病因解析学研究室
キーワード 幹細胞、細胞分化、再生医学、造血細胞、生殖細胞
T 幹細胞とは?
U ES細胞から血液細胞への分化誘導
V 生殖細胞、幹細胞の成立機構
 T 幹細胞とは?
 幹細胞とは、自己複製能と分化能を持った未分化細胞です。幹細胞がいろいろな細胞系列へと運命付けられ、成熟して最終的に機能する細胞へと分化します。血液細胞や皮膚上皮細胞、消化管粘膜上皮細胞など、寿命の短い細胞が一生の間枯渇しないのは、それらの幹細胞が常に新しく細胞を作り続けているからです。最近になって、神経や骨格筋など、従来は再生しないと考えられていた組織にも幹細胞の存在することが明らかにされてきています。
 我々の体は、多くの幹細胞システムによって構成された「幹細胞ワールド」なのです。幹細胞は急速に市民権を得つつあります。それは、幹細胞が持つ潜在的な増殖能を活かして、体外において増幅した後で細胞移植に用いてやろうという再生医学に利用できるのではないかという期待が高まっているからです。我々の研究分野では、幹細胞がどのような機構によって成立しているのか、また、幹細胞を操作することによって再生医学に応用できるのではないか、といった内容をメインテーマに、以下のような基礎研究をおこなっています。
■幹細胞は自己複製能と分化能を持った細胞である。
■運命付け、成熟を経て、最終的に機能する細胞へと分化する。
 U ES細胞から血液細胞への分化誘導
 臓器に固有の幹細胞のほかに、初期胚から樹立された幹細胞として胚性幹細胞(ES細胞)があります。マウスのES細胞は初期胚にもどされると、正常発生過程に取り込まれて、生殖細胞を含むすべての細胞に分化することができる、分化の「全能性」をもった細胞です。
 in vivo における分化能に比べると、in vitro の分化能はかなり制限されています。しかし、血液細胞、血管内皮細胞、心筋細胞、神経細胞などには容易に分化誘導することができます。我々はストロマ細胞上でマウスES細胞を培養することにより、血液細胞を分化誘導する方法(OP9システム)を開発し、血液細胞分化の分子機構の解析、ならびに、再生医学への応用を目指した研究をおこなっています。
■ES細胞をストロマ細胞 OP9 上で培養することにより、中胚葉コロニー、造血前駆細胞を経て、最終的に機能する血液細胞へと分化誘導できる。
■この分化誘導過程において、任意の遺伝子をコンディショナルに発現させることが可能である。
■いろいろな遺伝子操作をおこなうことにより、造血の制御機構を明らかにすることができる。
 V 生殖細胞、幹細胞の成立機構
 我々の体は、次の世代へと遺伝情報を伝達できる生殖細胞と、それ以外の体細胞から成立しています。生殖系列の細胞は、発生の初期段階において体細胞から分かれて分化します。その過程の最初に出現する始原生殖細胞とよばれる細胞は、すでに生殖系列に運命付けられていますが、ある培養条件ではES細胞とほぼ同じ性質を有した全能性細胞である胚性生殖細胞(EG細胞)へと脱分化することができます。
 生殖系列の細胞がどのように運命付けられるのか、逆に、生殖系列の細胞から全能性がどのように再獲得されるのか、についての研究をおこなっています。
 また、この研究を通じて、細胞における全能性がどのように成立しているのか、についての研究もおこなっています。 また、がん抑制遺伝子PTENノックアウトの解析から、PTEN/PI3キナーゼのシグナルが幹細胞の未分化性維持に機能していると考え、「幹細胞性」との関連、シグナル操作による幹細胞制御法の開発をおこなっています。
■がん抑制遺伝子PTENの欠損により、生殖細胞は多能性前駆細胞へと「脱分化」する。
■PTEN、PI3キナーゼのシグナルは幹細胞の維持に重要な機能を持っている。
仲野 徹 の研究活動
仲野 徹・・・関連HPへ
↑このページのトップへ