研究プログラム「各研究」 栗津 邦男 このページのプリント及び保存(247k)→
COEでの主な研究内容 量子ビームによる次世代の細胞・組織計測手法の提案
研究代表者 栗津 邦男(教授)
所属 工学研究科電子情報エネルギー工学専攻光量子プロセス工学講座
工学研究科自由電子レーザー研究施設
キーワード レーザー医学、光計測、自由電子レーザー、量子ビーム生物学、プロテオミクス
T UV/FEL-MALDI法による生体組織質量分析
U 光によるon-chip培養細胞管理システムの開発
V 赤外分光によるリン酸化の非破壊計測法とレーザー脱リン酸化による生体材料親和性制御
 T UV/FEL-MALDI法による生体組織質量分析
 蛋白質のレーザーソフトイオン化・MALDI法(マトリクス支援レーザー脱離イオン化法)は、質量分析によるプロテオミクスを飛躍的に加速化させた一手法です。しかし、現在汎用されている紫外レーザーでのイオン化では、細胞膜や生体組織のような難溶性蛋白質や脂質等の複雑混合物の分析はほぼ不可能とされています。
 当研究室で開発している、難溶性蛋白質解析のためのUV/FEL-MALDI質量分析システムは、紫外レーザーと波長可変中赤外自由電子レーザー(MIR-FEL)という2種類のレーザーを空間的・時間的に同時照射することで、混合環境下での難溶性蛋白質のイオン化を実現しました。
 本COEでは、本手法でより効率的なレーザーイオン化を実現し、現在未踏の領域である細胞・組織レベルでのMALDI質量分析を目指したいと考えています。また、細胞・組織分析を視野に入れた装置開発にも取り組みます。


具体的には以下のテーマを考えています。  
■複雑系のUV/FEL-MALDI質量分析  
■細胞・組織のin-situ MALDI質量分析と質量イメージング  
■UV/FEL-MALDI法のイオン化メカニズムの解明とイオン化の超効率化
         <ダイレクトプロテオームプロファイリング:生体組織のMALDI質量分析>
         <UV/FEL-MALDI法のイオン化イメージ>
ターゲット(試料、マトリクス、可溶化剤の混合物)に紫外パルスレーザーと
中赤外自由電子レーザー(MIR-FEL)を同時照射します。
紫外レーザーは電子励起状態を形成しマトリクスを急速過熱させて、
気化とともにプロトン授受反応を起こします。MIR-FELは振動励起状態を形成し、
イオン化過程を阻害する可溶化剤の凝集力を弱め、イオン化をアシストします。
 U 光によるon-chip培養細胞管理システムの開発
 現在、細胞や組織の品質・機能評価は、生化学的手法等による直接的・破壊的手法によって行われています。再生医学において、移植等に利用したい細胞や組織の量は限られており、機能評価と品質管理を非破壊的、かつ迅速に行うことのできるスクリーニング技術の開発が求められています。当研究室では、本COEで研究されるES細胞、幹細胞、再生組織、再生骨を中心とした細胞、軟組織、硬組織の品質管理を、レーザー蛍光励起と赤外分光法を中心とする光計測手法を用いて行い、新規細胞・組織機能評価法の確立を目指します。
 また、現在、細胞の種類や機能を解析した後、所望の細胞を回収する場合、フローサイトメーターやセルソーターといった大型かつ高価な装置を用いる必要があります。セルソーティング技術の小型化・汎用化は、細胞研究の臨床応用(一般化)への展開に必要な要素です。そこで、当研究室では、細胞の培養⇒計測⇒分別(高品質化)⇒回収といった、細胞の品質管理をon-chipで行うことのできる「セルチップ」の開発を行います。セルチップでは、培養能の高度化、計測・制御の簡易化、回収の高効率化を目指し、培養細胞管理の統合的システムの構築を目指します。
         <レーザーセルチップによる細胞品質管理システムのイメージ>
         on-chipで、細胞の培養・計測・選別・分取を実現するセルチップの開発と、
           これを用いた細胞の品質管理を行います。細胞の計測と選別は、
           量子ビーム(レーザー、光etc.)で制御します。
 V 赤外分光によるリン酸化の非破壊計測法と
           レーザー脱リン酸化による生体材料親和性制御
 腱や椎間板、歯周組織など硬組織と軟組織の境界に位置する組織の再建には、軟組織への適合性と硬組織への接着性を正確に制御できる材料技術が必要です。この生体親和性・接着性に関して、リン酸基を有する基材は生体の硬組織の主成分であるハイドロキシアパタイトの形成を促進することが報告されています。
 当研究室では、赤外分光法を用いて蛋白質のリン酸化を非接触かつ非破壊的に測定する手法と、波長9mm帯の自由電子レーザーやCO2レーザーを用いたレーザー脱リン酸化法の開発を研究しています。レーザー脱リン酸化法で生体材料表面のリン酸化量を制御し、赤外分光法で表面のリン酸化量を非接触で測定し、所望の生体材料の接着性・親和性を実現することで、生体材料デザインの最適化を目指します。
私たちは、本COEプログラムを通じて、レーザーを中心とした量子ビーム工学と医学の両分野を高度に理解し研究を実践できる人材の育成に努めます。
粟津 邦男 の研究活動
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