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21世紀COE特別レクチャー報告
田谷研究室 特任研究員 武澤 康範
 2005年9月14日、工学研究科生命先端工学専攻生物工学コース・メモリアルホールにて21世紀COEプログラム「細胞・組織の統合制御に向けた総合拠点形成」後援の特別講演会が開催されました。この講演会は工学研究科応用生物工学・教室セミナーを兼ねて行われました。

 Dana C. Andersen博士(Genentech, Inc., CA, USA)を迎え“Approaches and Challenges in the Manipulation and Control of Cellular Process in the Production of Recombinant Proteins”のタイトルで講演をしていただきました。本講演の参加者は約60名でした。

 Andersen博士は米国カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするバイオ技術会社Genentech Inc.でLate Stage Cell Culture チームのディレクターを務めていらっしゃいます。講演では、Genentech社の歴史・概観とその戦略の紹介から始まって、タンパク質製造プロセスを発展させるための化学工学の役割、さらに細胞培養系を用いた遺伝子工学によって治療に適用可能なタンパク質を生産する技術を中心とした内容で話をしていただきました。

 近年、医療分野では糖鎖結合した抗体や抗体断片の治療薬としての需要が高まってきており、これら抗体タンパク質の生産性を向上させるために研究チームがこれまで試みてきた哺乳類細胞培養系の構築・最適化について紹介されました。博士のグループでは抗体タンパク質を高水準に生成できる安定な哺乳類細胞としてチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO; Chinese hamster ovary)を培養系に用いています。培養系の時間経過に伴う変化を調べるために、代謝産物データと組み合わせてプロテオミクス(細胞の活動に必要とされるタンパク質の発現・生成を対象とする研究)に基づいたアプローチを採り、最終的に系を改良してゆくための潜在的標的を明らかにすることを目指しています。

 また同様に、種々の培地成分や培養環境が目的とする抗体タンパク質の糖鎖結合パターンに与える影響も調べており、これによって様々な因子が特定の糖鎖結合の調節に対してもつと考えられる潜在的利点を定量化することや、未だ分かっていない効果を突き止めることが可能になるだろうとのことです。講演後の質疑応答にも挙げられましたが、糖鎖結合タンパク質を発現・生成するには従来広く利用されている大腸菌培養系では不可能で哺乳類細胞培養系を用いてはじめて達成できるという点がユニークで印象的でした。 
 最後に、本講演会開催にあたって多大なご協力をいただきました工学研究科応用生物工学専攻の皆様に感謝の意を記します。




COE招待講演のAndersen博士


講演に聴き入る参加者


各イベント、演者のみ表記。挨拶、座長、世話人は表記省略させていただいております。
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