分子振動励起波長域のFELによるコレステロールエステルの分解反応
Dissociation
of cholesterol ester by molecular vibration exciting free electron laser
深見裕子、部谷 学、粟津邦男 (大阪大学大学院 工学研究科 自由電子レーザー研究施設)
Y. Fukami, M. Heya and K. Awazu (iFEL, Graduate School of Engineering,
はじめに:我々は、中赤外自由電子レーザー(Free-electron Laser, FEL)を用いて低侵襲なコレステロールエステルの除去方法の基礎的検討を行っている。FELの連続的な波長可変性は作用効果の種類や対象の選択を可能とする。これまでに、コレステロールエステルのエステル結合を波長5.75μmのFELで振動励起しFT-IRにより分析し、カルボン酸が生成したことがわかったが、その定量的な検討はなされていない。今回は、質量分析の結果を用いて分解物の生成率を算出し、FEL照射条件に照らして検討する。
対象と方法:FEL照射対象試料にはオレイン酸コレステリルを用いた(図1)。FELの条件は、波長5.75μm、平均パワー密度1-8W/cm2、照射時間1時間であった。照射後、試料をFT-IRおよび質量分析した。
結果と考察:照射試料を質量分析すると、質量数m/z=385および369の位置に質量ピークが得られた。m/z=385のピークはオレイン酸コレステリルに由来し照射前にも検出された。m/z=369のピークはコレステロールに由来し照射後にのみ検出された。これらのことからFEL照射によってエステル結合が解離しコレステロールが生成したことがわかった。2つのピークの比をもとに各照射試料のコレステロール生成率を計算した(図2)。平均パワー密度が上がるにつれて生成率は増加した。同図に、マクロパルス1個が入射したときの試料表面温度を見積もり併記した。表面温度とコレステロール生成率を比較すると、炭化温度(定常加熱下)に達するパワー密度で生成率が急激に増加したことが分かる。以上の結果から、@コレステロールエステル分解の主要因は熱効果である、AFELはパルスレーザーであるため熱放散が早く(<1msで90%放散1))炭化なしにエステル結合の解離のみが起こる、等が考えられる。
1) 粟津邦男、岡本一真、多田幸生:Proc.
Beams (1999) p.47


| 図1 オレイン酸コレステリルの分子構造 | 図2 コレステロール生成率の平均パワー密度依存性 |
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